前略
あれはミルヒトがオープンした直後のある暑い日でした。
6月の終わり頃でしたが、初夏といえども気温が高く陽射しも強いその日。
私(店主妻)は緊張していました。
その日はレンズメーカーさんとの初めての打ち合わせ。
ド新人の私にとってその頃は初めて尽くしなので、毎日がドキドキの連続です。
どんな方なんだろう?
どんな話をするんだろう?
大して役に立てるわけではありませんが色々と思いが巡ります…
すると約束の時間ちょうどに颯爽と現れた、長身のすらっとした男性。
強い陽射しに負けないよう濃い色のサングラス姿です。
!
よく見ると、なんておしゃれなサングラス…
普通のメガネとしても使えるような流行りのボストン型です。
流石レンズメーカーさん、紫外線の強いその時期にぴったりのレンズ濃度にオシャレフレーム。素敵なチョイスです!
室内にそのサングラスをかけたまま入って来られましたが、そりゃあここは眼鏡屋。
新人の私でもそれくらいでは驚きはしません。
軽くお互いの紹介を済ませ、店主がオープンしたばかりのお店の説明などをしている間に私はテーブルの上をさっと片付け、エアコンの温度を調節したりします。
2人が打合せのテーブルに落ち着いた頃、私も勉強の為に近寄りました。
!!
やはりメガネが変わっていました!
先ほどのサングラスから、今度は普通のメガネへ。
・・・と言っても流石レンズメーカーさん、
単なる普通のメガネではありません。
フレームは先ほどのサングラスに似たおしゃれなボストン型なのですが、
驚くのはそのレンズの色。
うっすらグレーがかっています。
昔で言う『色メガネ』というジャンルのものなのでしょうか。流行のフレーム型にうっすらさりげないカラー。
目が透けて見える濃さなので嫌味な感じもなく、むしろ流石レンズメーカーさん(本日3回目)、絶妙なカラー選択で他とは差を付けます!!
メガネ業界ってこういう所なんだ。
私も「素敵なメガネをかけているな」と思われたいな…。心の中でつぶやきます。
そんなこんなで打合せは続きます。
前回の「あなたの知らない世界」でお伝えした通り、その頃の私にとってレンズの世界はチンプンカンプン。
レンズメーカーさんが色々な資料を見せながら説明して下さいますが、カタカナや数字、オプトメトリー用語に光学用語、ほとんど呪文のようにしか聞こえません。
しかし少しでも分かるようなふりをしながら聞きます(汗)
そしてふと顔を上げてレンズメーカーさんの顔を見上げた時でした。
…
…
!(気付く)
…
!!(二度見)
!!!(確信)
メガネが変わってる~~~!!!
色メガネから普通の透明のレンズのメガネへ。
本日3本目?!
いつ?
どのタイミングで変えたの??
えっ、
いや待てよ、
えっ、まさか?
!
まさか~!?
!!!!!(驚愕)
気付いてしまいました・・・(やっと?)
イリュージョンのように変わっていたのはメガネではありませんでした。
フレームはそのままで、変わっていたのはレンズの色だったのです。
(メガネにお詳しい方、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。)
後から知りましたが、これは「調光レンズ」という類のレンズでした。
紫外線に反応して色が濃くなり、屋外ではサングラス仕様、室内では通常の眼鏡仕様になるレンズ。
わざわざ室内に入った後にかけ替える必要がないのでとても便利です。
当店の調光レンズユーザーのお客様に言わせると、
「こんな便利なレンズを世間の皆が使わないなんてなんでだろ」。
色が変わっていく時間の幅もあるので、レンズ色の変化だけで何通りものメガネを使い分けているような見た目の効果もあります。
『流石レンズメーカーさん』はここで使うセリフでしたー!
今回は私が調光レンズを初めて知った時の体験をお話ししましたが、メガネ素人の私の度肝を抜くレンズ、実はまだまだたくさんあります。
それを知るたびに思い知らされるのは、レンズの技術や能力、パフォーマンスや使い勝手の良さは日々進歩しているということ。
まさにレンズメーカーさんの努力の賜物、そして「知らなきゃ損」の世界でもあります。
ご紹介した調光レンズをとっても、以前はグレーとブラウンしか無かったのですが最新版では様々なカラーに変化!
しかも発色⇔退色が早いのです。
ミルヒトのお客様の中にはフレーム(ファッション面)のこだわりだけでなく、それらのレンズ機能や見え方の改善に期待してお越し下さる方も多くいらっしゃいます。
その方々はそれまでに様々なレンズを使ってこられた方はもちろん、最近になって雑誌やテレビなどで見聞きし、気になって詳しい情報を求めてご来店頂く方もお見えになります。
ミルヒトではそういった声にお応えできるよう、様々なメーカーの多岐にわたるレンズをご用意しています。
ただ、私にとってまだまだ「知らない世界」であるように、種類が豊富なだけに小難しいルールや制約(いわゆるできることとできないこと)があったりもします。
また、その機能を存分に発揮させるには日々の生活スタイルやメガネの使用場面・頻度などの問診をしっかりしてご説明しなければなりません。
すなわち、きちんと時間をかけてご相談頂き、ご説明をさせて頂く。
これはミルヒトが大切にしている個人店、眼鏡専門店ならではのスタイルの一つです。
一件一件のご相談に対して、お時間はかかってしまいますが、ご理解・ご納得のいくまでお話しさせて頂きます。
今回ご紹介した調光レンズはもちろん、他にも何か気になるレンズがあれば是非お問合せ下さい。
私の目線からも様々なレンズの種類についてこのブログ内で順にご紹介できたらと思っています。
ところで今回のブログ、メガネ上級者の方々はどの辺りで「調光レンズでしょ…」と気付かれましたか?
私はこの事件以降、サングラスのまま室内に入ってくる方は全て「調光レンズ」を疑うようになりました(笑)
主人に聞いたところ、「室内に入って3分くらいで退色してきて気付く」と言っていたので、メガネのプロはそこまで気にしてないのだな…と。
驚愕し過ぎて「調光レンズ」チェックがかなり厳しくなった私でした。
草々
水谷(妻)
名古屋市千種区春岡通6-7
眼鏡店 ミルヒト
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